現代防人(さきもり)論考   ~「現代の防人、自衛隊」を襲う高齢化、今こそ求められる国民の支え~
公益財団法人日本国防協会理事
上村 邁

Ⅰ はじめに   尖閣諸島に対する中国からの脅威が急を告げています。中国の脅威といえば嫌でも、千数百年前、「白村江の戦い」において大敗し、唐の脅威に対して九州防衛のために創設した「防人(さきもり)の制度」を想起せざるを得ません。 万葉集の「防人歌」で知られる防人は、次第に、代わって創設された「一人を以て百人に当たる強兵」を募る「健児(こんでい)の制」に起源をもつ地方武士団に国土防衛の任を譲っていきます。13世紀、文永・弘安の役で来襲した蒙古(元)軍を撃退したのは、神風などではなくこれらの武士団でした。 翻って現代、近年南シナ海に地歩を確立してわが国の領土に触手を伸ばす中国の脅威に対抗

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日本の安全保障と今後の課題
前統合幕僚長
河野 克俊 氏

ただ今ご紹介いただきました河野です。本日はオンラインによる講演ということで、慣れないところもありますが、よろしくお願いしたいと思います。 さきほどの紹介にもありましたように、私は平成24年(2012年)から平成31年(2019年)まで、海上幕僚長を経て統合幕僚長の職を務めさせていただきました。その間、さまざまなことを経験しましたが、日本を取り巻く安全保障上の環境についていえば、まず中国、次いで北朝鮮の動向を注視していかなければならないと思います。また、ロシアについても目を離すことができない状況になってきていますので、これらを中心にして、私が現役にいた時との違いも含めながら、これからお話をさせて

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中台の軍事バランス ~現状と課題~
東京大学 東洋文化研究所教授
松田 康博 氏

皆さんこんにちは。今回、日本国防協会から講演のお話をいただき、初めは、自衛隊のOBの方が多くいらっしゃるのではないかと思っていましたが、必ずしもそうではなくて、会員の多くは自衛隊以外の方々と伺いました。私は防衛省の防衛研究所で16年働いておりましたが、一般の人が軍事・安全保障に関心を持つということは、民主主義国家を維持する上で非常に重要なことだと思います。私自身は武器を扱ったこともなく、シビリアンの研究者として軍事・安全保障に関する研究を続けて参りましたが、最近の日本を含む東アジア情勢の中で「中国の軍事力の伸びは突出している」ということを特筆したいと思います。本日はこのような中国の躍進も含めて

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日本が消える日~ここまで進んだ中国の日本侵略~
産経新聞 論説副委員長
佐々木 類 氏

皆さんこんにちは。産経新聞論説副委員長の佐々木類です。よろしくお願いします。 本日はいろいろなお話をしたいと思っていますが、時間も限られておりますので、お話しできなかったところは、今月10日発売予定の「日本が消える日」という本で読んでいただければと思います。   まず最近話題の日韓関係についてお話しします。先日、ASEAN(東南アジア諸国連合)関連会議に出席のため、タイのバンコクを訪れた安倍晋三総理が韓国の文在寅大統領と会談しましたが、その時の写真は皆さんもご覧になられたと思います。文大統領から「是非座って話をしたい」と申し込まれてソファで11分間話をしましたが、通訳が入るので実際の

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憲法改正の課題-憲法9条に「自衛隊」を明記する案について-
福山市立大学講師
安保 克也 氏

  はじめに 北朝鮮の核やミサイル問題、中国による海洋進出など、日本を取り巻く安全保障環境は厳しい。そのため、政府は地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の導入予定である。我が国の防衛に重要な問題がある時期に、何故、「憲法9条に自衛隊を明記」する憲法議論を行うのか、私にはまったく理解ができない。本来であれば、自衛隊明記よりも、厳しい安全保障環境を考えれば、憲法9条2項の問題に着手する憲法議論をすべきだと考えるからである。しかし、「憲法9条に『自衛隊』を明記する案」(自民党憲法改正推進本部)が改正案である以上、憲法改正に賛成の立場から、自衛隊の明記案に対して批判的な考察とその対応について検討

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自衛隊明記論に問う
~真の憲法9条改正を目指して~
元陸上自衛隊幹部学校副校長
上村 邁

「自衛隊を憲法に明記する」という憲法改正案が国会に提出されようとしている。外国でも多くの国が憲法で軍隊を明記していることからすれば、一見もっともなことのように思えるが、こと日本においては、話はそう簡単ではない。言うまでもなく、「戦力は持たない。交戦権は認めない」という憲法9条2項の存在を避けて通れないからである。世界にも類を見ない憲法の条文ではあるが、先の大戦を教訓とし、平和国家の理想を掲げて国際社会に再登場せんとした戦後日本の決意を象徴するものである。そして、その選択が間違っていなかったことは、戦後70年を過ぎた現在の日本の立ち位置が明らかにしている。世界に受け入れられた平和国家のイメージ、

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自衛隊明記だけの改憲は困難、ならばどうするか
東洋学園大学名誉教授 元陸上幕僚長
冨澤 暉 氏

一 昨年の自民党総裁選で明らかになったこと 昨年9月21日の自民党総裁選で安倍晋三氏が当選した。当時、その勝利の原因をマスコミは色々に評していたが、議論が大きく分かれるような困難な問題は先送りして、ゆっくりと事を進めていこうとする安倍氏の手堅さを自民党員たちが買った、ということなのだろう。 実は自民党員ではない私自身も、その安倍総理の安定性、特にこの大激動の世界情勢の中で、諸外国との外交について長期政権維持者としてそれなりの実績を挙げていることについて高く評価しており、国民の多くも「これからの3年間を任せられるのは安倍さんしかいない」と考えての結果だったのだろうと納得したものだった。 無論、ト

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「憲法改正案について考える」
元 陸上自衛隊 北部方面総監
廣瀬 誠 氏

憲法改正の議論の中で、憲法9条1項と2項をそのままにして、自衛隊を書き加えるという「加憲案」が有力視されているように見えるが、今後、国会の憲法審査会がどのように審議を進めていくか注目される。 現憲法は、占領下に制定されたものである。GHQは当初、わが国の非武装を考えていたと思われるが、東西冷戦の開始、朝鮮戦争の勃発はその「理想」の貫徹を許さず、在日米軍の半島派遣に伴い、わが国は警察予備隊、のちの自衛隊を創設するに至った。その時から、憲法9条の掲げる非武装の理念と現実に対処するための自衛隊の保持の関係について、その法的整合の議論が繰り返されてきた。 近年、わが国を取り巻く情勢が厳しさを増していく

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「現行憲法改正に思う」
森 勉(日本国防協会理事長)
平成30年1月

自由民主党は結党以来自主憲法制定を党是とし地道な努力を行ってきた。しかしながら、戦後のわが国の世論は護憲・改憲に分裂し激しく対立してきた。最近では北東アジア情勢の緊張もあってか、平成12年には衆参両院に憲法調査会の設置、平成22年には憲法改正国民投票法の施行、平成24年には自由民主党が「日本国憲法改正草案」を発表する等現行憲法改正の議論が活性化してきた。 安倍政権は現行憲法の改正に前向きに取り組んでおり、やや唐突であったが昨年5月の憲法記念日に、現行憲法9条1項・2項をそのままにして3項に自衛隊の存在を銘記し、根強く存在する自衛隊違憲論を払拭する案を提示した。又先の衆議院選挙においても現行憲法

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