[日本の国際化と平和について]
駐日サンマリノ共和国特命全権大使
マンリオ・カデロ 氏

 

皆さんはじめまして。今日は誠にありがとうございます。
サンマリノ共和国は、ヨーロッパで設立された一番古い共和国です。今から1700年前、日本では卑弥呼の時代にあたりますが、建国されました。ヨーロッパにはいろいろな国がありますが、サンマリノはイタリアの中にある小さな国で、山の上に建国されているので外からはなかなか攻めにくく、宝物もそんなにありませんでしたので、そのような理由から何百年、何千年にもわたって周囲の国から侵略されることはなかったのでしょう。そして、昔から王様と貴族はいませんし、サンマリノの人たちは割とおとなしくのんびりしていたので、長い間、現在の共和国を守ってくることができました。イタリアは昔王国でしたが150年前にサンマリノと同じく共和国になりました。
ただ、サンマリノよりもっと古い国があります。それは日本です。最初の天皇である神武天皇から数えて今日まで、記憶に間違いがなければ2677年続いています。世界で一番古い君主国が日本で、一番古い共和国がサンマリノです。

 

神社とは ~日本の文化の基盤~

 

パンフレットの中に、サンマリノのインフォメーションが載っていますが。皆さんが驚かれるのは神社があることでしょう。なぜ神社がサンマリノにあるのでしょうか。
2011年の東日本大震災で、日本が大きな地震と津波に見舞われたときに、日本に敬意を表している世界中の国が、ドネーション(寄付)をはじめいろいろな協力をしました。
サンマリノは小さい国なので大きなお金は寄付できませんでしたが、サンマリノ日本友好会では、日本のために何をすればよいかを皆で一年ぐらいかけて考え、そもそも日本の文化の基盤は神社にあるのではないかということになりました。
神社は宗教団体というよりは、日本人の考え方、哲学なのではないでしょうか。いわばライフスタイルともいえます。神道では平和を尊び、自然を神さまとして敬っています。自然が本当の神さまなのです。日本ではこれを当たり前と思っていますが、ヨーロッパでは残念ながらそうではありません。他の神さまはすべて人が作った神さまなのです。キリスト教、仏教、イスラム教は人が作った宗教であり、そこでは神話の世界が色濃く存在しています。しかし、神道ではそうではありません。なぜでしょうか。それは自然即ち、太陽、海、緑の大地が神さまとなっているからです。

それから、自然崇拝と並んで素晴らしいのは、世界の宗教でシンボルとなっているのは、キリストとかマホメットとか、ほとんど男性ですが、日本だけは神さまのイメージが女性で表わされていることです。我われは女性から生まれます。生命の始まりが女性なわけです。もちろん男性も必要ですが、女性の方がより重要な役割を担っています。世界を見ても、女性が多い国は平和なところが多いといえます。女性が少ない国は国内でもうまくいっていない場合が多く、問題をいっぱい抱えています。例えば、中国の場合は女性の方が2000万人以上足りないといわれ、インドでも1800万人足りないといわれています。これらの国を見ると、女性が多い方が平和という意味がお分かりになると思います。女性を大事にしていきましょう。よろしくお願いします。(笑)
女性が一番長生きする国は日本です。不思議なことに、男性が一番長生きするのはサンマリノです。この理由は私にも分かりませんが、おそらく、サンマリノの街は世界遺産となっており、町の中では車が使えなくて歩かなくてはいけません。坂もいっぱいあります。食生活でも、オリーブオイル、ワインとか、またお魚や野菜など健康的なものをよく食べるので長生きするのではないでしょうか。サンマリノも女性が多くて平和な国ですし、おそらく男性はのんびり生活できるので、日本人の男性よりストレスが少ないせいかも知れません。日本人の男性は真面目でしっかりしていますから、結構ストレスがあるのではないでしょうか。

 

日本の素晴らしさをアピールしよう ~英語表記を広めよう~

とにかく日本は素晴らしい国です。今日益々、世界中の国々に日本の文化とライフスタイルが広く知られてきています。食べ物、おしぼりなどがそうです。最近のものではウォシュレットが素晴らしいです。私は外国にもよく行きますが、外国にはウォシュレットがないので不便さを感じています。ウォシュレットは使用に慣れてしまったらなかなか止められません。ただし、外国の人が日本に来ても、公衆的な場所などホテル以外のウォシュレットには日本語しか表記してありませんので、使い方が分からないことが多くあります。「漢字」とか「描図」の表記により内容はある程度想像できますが、それでもウォーターを止めるやり方が分からないとか、ウォシュレットに関してはいろいろなトラブルが見られます。
その他、相部屋制、割り箸とか日本ならではのいいアイデアがたくさんあります。割り箸は明治時代に生まれました。外国の人特にアメリカ人は、日本の人が割り箸を使っているので緑の森がなくなっていると思っています。言うまでもありませんが、割り箸は捨ててもよい屑の木を使っていて、木を燃やすよりはそれで割り箸を作って利用する方がいいわけです。割り箸はすごく健康的です。スプーン、フォークはいろいろな人が使い、そして洗ってまた使うわけですが、割り箸は一回使ったら捨てて次に新しいのを使うのですごくきれいです。割り箸で緑がなくなるわけではありません。日本の人はものすごく節約が上手だと思います。割り箸はエコなのですが、外国の人はこのようなことを結構知らないことが多いのです。これは日本の皆さんにも責任があります。どうしてかというと、例えば関西に行き名鉄と近鉄の駅で切符を買うと、日本語と英語が書いてありすごく親切だと思います。ところが、JRの切符には日本語だけしか書いてありませんのですごく不便です。私はよく新幹線に乗りますが、どこの席に座ってよいか分からないでいる外国の人をよく見かけます。そこで私は「切符には英語表記もお願いします。外国の人はそれで助かります」とJRに手紙を書いてお願いしたこともあります。

日本のお茶は最高です。世界ナンバーワンのお茶の国です。爽健美茶、麦茶、十六茶、抹茶などいろいろなお茶があります。私は昔からコーヒーはあまり飲まないのですが、お茶は大好きです。それでも、これらのお茶のボトルにも日本語ばかりが書かれています。たしかにローマ字でサントリー、キリン、伊藤園などと表記されていますが、会社の名前だけでまったく意味がありません。例えば「この茶はグリーンティー」とか、「この茶は六つの種類のお茶のブレンド」とか中身のことをしっかり書いてもらいたいと思います。
日本は素晴らしく便利な国です。外国には日本ほどコンビニはありません。でも、コンビニに置いてある商品もほとんどが日本語のみで書かれています。お水を買いたいと思った外国の人がボトルを見て、これは瓶のボトルだから少し高い高級なミネラルウォーターだと思って買ったら日本酒だったという話もあります。(笑)日本酒のボトルの表示にはお酒とは一切書いてありません。何も書いてないのです。「大関」というお酒の名前は書いてありますが中身については何もありません。外国の人は「大関イコール日本酒」とは分からないわけですから、そこが分かるように何か一言書けば売り上げが伸びると思いますが皆さんどうでしょうか。

漢方薬は私もよく使います。日本の漢方薬はすごくいいと思いますが、パッケージには電話番号まで漢字で書いてあります。外国の人で日本の漢方薬にすごく興味があり是非買いたいと思っても、英語の説明がなく中身もよく分からないということがよくあります。私は何年か前に、漢方薬のある大手の会社に手紙を書きました。「漢方の薬をよく使っています。多くの外国の人が漢方に興味がありますが、日本語ばかりでよく分かりません」と。すると、その会社から返事がきました。「おっしゃるとおりですが、漢方薬は我われ日本人が使用することを前提にして作っているので、外国の人が使用して身体に合わないとご迷惑を掛けますから」と言われました。同じ人間ではないですか。アスピリンは世界中のどこでも使用されています。日本人、アジア人、西洋人、アフリカ人、すべて同じなのではないでしょうか。日本の人はとかく気を使い過ぎ、心配し過ぎる傾向があります。一言、英語表記することで漢方薬はビッグビジネスになると思います。現在、日本で一社だけ英語と日本語で書いてある製薬会社があります。表に日本語、裏に英語で書いてあるので、ほとんどの外国人はこの会社の薬を買って使用しています。
薬についていえば、二日酔いの薬は日本が世界でナンバーワンです。いろいろな種類の薬があり本当に素晴らしいです。外国の人が日本に来て、日本酒、ワイン、ビールなどガブガブ飲みますが、私はいつも「日本酒は飲みやすいけど、飲み過ぎると次の日は大変、頭が痛くなるのでほどほどにするように」と気を付けるように言っています。私も結構お酒は強い方ですが、二日酔いにならないようにといつも薬の用意をしています。日本に来た外国の人に薬をあげると「この薬は良く効きますね。どこで売っていますか」とよく聞かれます。そこで「薬屋さんで売っています」と当たり前に答えたいのですが、薬局に行っても英語では書かれていませんので、どういう風に言えばいいのか迷ってしまいます。日本では何十何百という種類の薬がありますが、外国では胃の薬は数種類しかないのです。日本では食べるのが好きな人、お酒飲むのが好きな人など、その人に応じた薬があります。これは素晴らしいことです。英語でも表示すれば世界中で売れることは間違いありません。日本はもう少し国際的な面に眼を向け、商品もバイリンガルにすれば今よりもっと外国で日本製品が広まっていくと思います。

 

世界のどこにもある「靖国神社」とは

次に靖国神社についてお話をします。外国の人は「どうして靖国神社に行ってはいけないのですか。誰がそう言っているのですか」とよく聞いてきます。「靖国神社」なるものは世界中にあります。例えばアメリカの「靖国神社」はアーリントンメモリアル、フランスでは凱旋門、イタリアがローマにあるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂と、世界のどこの国にもあるわけです。そういうところに「行ってはいけない」などというのはナンセンスです。靖国神社は148年前に建立された素晴らしい神社です。その国のために亡くなった人を祀る神社が「よいか悪いか」などというのはナンセンスです。日本の「靖国神社」にあたる外国のアーリントンメモリアルとか凱旋門で、「これはよい兵隊さんを、こっちは悪い兵隊さんを弔う」とかそういうことはありません。国のために亡くなった人のメモリアルの神社ということを、外国の人がよく分かるようにパンフレットなどにも英語でしっかり書いておくべきだと思います。

最近、中国の人が日本に憧れてやって来ますが、中国人、韓国人は日本が大好きです。日本に住んでみたいと思っていますが、なかなかビザを取るのが難しいのです。自分の国では一生不動産を買うことはできないので、日本で家を買ったり、投資をしたりしているのでしょう。買った後は毎年支払わなければいけない所得税とか不動産税とかいろいろありますが、彼らは日本の不動産を買って安心しています。
そうしながら、中国からの観光客は中国を出発する前に、旅行上の注意として「日本の東京ではどこに行ってもいいけど、靖国神社へは行ったらいけない」と言われているのですが、こんなバカな話はありません。人は行ってはいけないと言われると行きたくなるものです。結局、中国人は皆、日本に来ると靖国神社を見に行きたいと思い、そして実際見に行くのです。私は日曜日は靖国神社周辺で骨董品市が開かれているのでよく行きます。安いものを買うこともできるので、多くのバスで中国人がやって来て写真を撮っています。私は少し中国語が分かりますから、彼らが「靖国神社はきれいなところだし、どうして行ってはいけないのだろう」と話しているのが聞こえてきます。情報が間違っているのです。靖国神社に行くのは日本の文化の一部なのです。

 

サンマリノ神社と日本との交流

 

神道の神社は珍しい建築物でもあり日本にしかありません。サンマリノに神社を建てた時は、日本の伊勢の職人さんに来てもらいました。まず日本で神社を造り、それをバラバラにして船に積んでサンマリノまで輸送しました。そこに伊勢からの2人の職人さんとサンマリノの3人の職人さんが協力して、3日間で神社を建てました。その時噂を聞いて建築関係の先生とか学生が見に来ました。どうしてかというと、ヨーロッパの建築では日本のように木を組み立てることはしませんから、このような技術は持っていないのです。神社は釘を使わずに木材を組み立てて造ります。皆さん一生懸命勉強していまして、神社が3日間で完成した時には、全員が感動していました。日本の技術には繊細で素晴らしいものがあります。神社の建物はシンプルですが、丈夫で厳かな雰囲気も持っています。サンマリノ神社では、建立された2014年から毎年6月の最後の土・日曜日に「にっぽんまつり」というのを行っています。「にっぽんまつり」では皆さん神社に行ってお参りをし、神社の前では能を舞い、あるいは琴、三味線、踊り、歌、和歌などを楽しんでいる人もいます。2014年に神社ができ、2015年から「にっぽんまつり」が始まったのですが、韓国からも30人ぐらいやって来て、神社の前で韓国の踊りを紹介しました。神社では差別とか区別ということはありません。神社の周囲にはゲートもなく、24時間いつでも誰でも、神道でない人でも来ることができます。サンマリノでは日本の神社のお蔭で文化の交流が広がっています。能、歌舞伎を見たいという人が多くなっています。夜にはサンマリノの広場に屋台が現われ、日本料理、日本酒とかおにぎりとかいろいろな食べ物を出しています。今一番売れているのは抹茶アイスクリームです。あっという間に売り切れます。

このように、お互いに交流を深めいい関係を作ることが大切になります。たとえ言葉が通じなくてもいいのです。踊りやお料理を一緒に楽しむのに言葉はそれほど重要ではありません。今年は伊勢からやって来た25人の女性がゆかたを着て、サンマリノ神社の前で踊りました。夜、街の中で日本の音楽をかけながら、提灯を灯して歩きました。サンマリノは小さな国ですが年間300万人の観光客が訪れます。オーストリア、ドイツ、ユーゴスラビア、スイスとか近隣のヨーロッパの人々は、サンマリノと日本文化との親密な交流に驚きながらも楽しんでいます。このようなプロモーション、人々が直接見る、触れる、一緒に踊ったり食べたりする活動が平和な社会に繋がっていくのです。日本の伊勢とは結び付きが強く、伊勢商工会議所会頭には2回もサンマリノ神社に来てもらっています。結局、神道は平和に大きく貢献している素晴らしい哲学、教えなのです。

イタリアのローマにはカトリック教会の総本山のバチカンがあります。世界中の宗教団体には小さくても大きくても必ず教会があって何らかの活動を行っていますが、神道にはそのようなものはありません。ヨーロッパの人は神道に触れてその考え方やライフスタイルに憧れますが、神道は自ら宣伝することはせず謙虚に振舞っているのであまり知られておらず、私は「もったいない」と思っています。私は駐日各国大使の団長である「駐日外交団長」になってから、日本の天皇陛下には何度もお会いしています。例えば、天皇陛下が外国へ行かれる時のお見送り、お出迎えは駐日外交団長が行かなければなりません。日本には各国の大使が155人もいますので皆の代表として行くわけです。外国から偉い方が来られると宮中晩餐会が開かれますが、やはりその時も、代表が出席しなければいけません。我われ外国人から見た天皇陛下あるいは皇室の姿は、ものすごく謙虚でエレガントに感じます。天皇陛下は全く威張ることなく、本当に優しいことに驚かされます。天皇陛下に何度もお会いしてお話しをさせていただき、日本の文化とか哲学とかものすごく勉強になりました。
外国の王様とか大統領でも威張っている人が結構います。時々、政治家や大きな会社の社長でも威張っている人を見かけますが、「失礼ですが、天皇陛下があれほど謙虚に振舞っておられるのに、貴方は何でそんなに威張っているのですか。疲れませんか」と聞いてみたい思いがよくします。

 

 

以下、機関誌「日本の国防 平成30年7月 盛夏号」(参照:斡旋品販売キャンペーン欄)

<後段>
神社を守ることは、日本の伝統、文化を守ること
誇りをもって国際交流に努めよう

(平成29年12月13日 公益財団法人日本国防協会国防問題講演会講演録より)